2009/09/14

ドイツ旅行記その2・DDR博物館

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DDR博物館は、ベルリン大聖堂近くにある、旧東ドイツの人々の日常生活をテーマにした博物館です。この博物館の特徴は、「手に触れ、体感できる」ということです。例えば、入り口近くに旧東ドイツの国民車「トラバント」が飾ってあり、実際に乗ることができます。「現在ではほとんど使われていない2ストロークエンジンが搭載されており、最高時速100 km」といった説明を読みつつ、細いハンドルやスカスカのアクセル・ブレーキに触れると、いかにボロい車かが実感できます。その一方、「トラバントを手に入れるためには、16年も待たなければならないこともあったし、良く故障するのでオーナー自ら修理する必要があった。だが、年を経るにつれて、オーナーは自分のトラバントに愛情を抱くようになり、トラバントに関する詩を書いたり、ジョークを言ったりしたのだった」という記述もあり、何となく懐かしいような気分も味わえます。その他にも、学生のノートを手にとって見たり、洋服に触れたり、放映されていたテレビ番組を見たりと、狭いながらも盛りだくさんの展示があります。

この博物館は、「旧東ドイツは紛れもない独裁国家だったが、人々はそこに住み、働き、愛し合い、家族を作り、幸せに暮らすことだって出来た。その生活とはどんなものだったのか?」というコンセプトで作られています。当然、旧東ドイツの粗悪な製品や宣伝放送といった負の側面もありのままに展示してありますが、それだけでなく時にユーモラスな、時には詩的とも言える展示や説明があり、それが大変魅力的です。その点、チェックポイントチャーリーにある「壁博物館」とは全然違います(冷戦時代からあったとかで、「壁」と東ドイツの政治体制がいかに非人間的か、という点が強調されていた気がします)。なお、博物館の展示内容は、下記の本にほぼそのまま書かれています。

私が一番印象に残った展示は、「東ドイツではヌーディズムが盛んだった」という展示です。人々が素っ裸で、満面の笑みを浮かべつつテニスに興じる記録映像や、海水浴を楽しんでいる写真が展示されています。何ともユーモラスで、思わず吹き出してしまいます。何でも、80%の人が一度は公共の場で裸になったことがあり、10%は定期的にヌーディズムを実践していたとか。なぜでしょう?「それは、性の解放とはあまり関係なく、むしろ東ドイツの硬直した体制に対する反抗という意味合いが強かった。また、裸は真の『階級差別からの脱却』の印でもあったのだ」との説明がありました。東ドイツにおける生活の滑稽さと、そうせざるを得ない程の抑圧、そしてささやかな幸せが、ヌーディズムに象徴されているような気がしました。

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