1. KULeuven vs. 東大
オリエンテーション3日目の午前中は、博士課程に進学、あるいはポスドク(博士号取得後、任期付研究員として働く人)として新たに加わった外国人向けの説明会がありました。まずは大学の概要紹介です。それによると、KULeuvenの総学生数(修士、博士課程含む)は約33,500人。内博士課程の学生は3,800人と言うことです。研究費は250百万ユーロ(約330億円)で、内50百万ユーロ(約66億円)が競争的資金(外部機関の評価を経て獲得した研究費)とのこと。誰かが「KULeuvenはベルギーの東大だ」と言っていたので、東大と比較してみましょう。
KULeuvenの方が学部、修士の学生が多く、東大は博士課程の学生が多い(1)ことが分かります。また、研究費は東大の方が多い(2)です。こうしてみると、KULeuvenはどちらかというと教育重視、東大は研究重視の大学なのかなと思います。つい最近発表されたTimes Higher Educationの”World University Ranking 2009”によると、東大は22位、KULeuvenは65位ですが、”Citation/ Staff Score (研究内容がどれだけ引用されたか)”と”International Staff, Student Score”でKULeuvenは東大を引き離しており、研究費が少ない割には頑張っているのではないかと思います。
(1) 東京大学ホームページより
(2) 国立大学法人等の科学技術関係活動に関する調査 参考資料(平成19事業年度)http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu77/siryo4-1-3-23.pdf
2. 充実した博士課程教育
次に、博士課程教育の詳しい説明がありました。まず、学生の約1/3が外国人という説明がありました(東大は17%)。外部から優秀な人材が来ることは、研究の面でも文化交流の面でも良い刺激になりそうです。その後、博士課程での必須事項(論文を書く、海外の学会で発表する等)の説明があり、続いて卒業後の進路について紹介がありました。それによると、卒業生の9%は大学に残って研究を続けるが、他は産業界、NGO、公務員、教育機関などに就職するそうです。また、労働力市場で博士号取得者が低く評価されているというデータを示しつつ、「就職に向け、研究以外のスキルを磨くことの重要性」を強調していました。当然、そのためのカリキュラムもたくさん用意されており、自己認識、タイムマネジメント、コミュニケーションスキル、リーダーシップ、組織マネジメントなどがあるとか。課程が始まる前に、課程修了後のキャリアパスを学生に意識させる点、また大学全体が組織的に博士のキャリア支援を行っている点が素晴らしいと感じました。
3. 入学試験なし!
午後は、Leuven市の南西にあるHeverleeキャンパス(理系学部が集まっている)のガイドツアーです。職員と学生ボランティアが、歩きながらキャンパス内にある城(現在は教室として使われている)や、学生食堂、学生寮などを紹介してくれました。休憩中に学生ボランティアと話す機会があったので、いろいろ聞いてみました。彼によると、大学入学に際して、ベルギー人には入試がなく、希望する大学に行くことができるそうです。ただし、入学後の進級試験は大変厳しく、脱落する学生も少なくないとか。彼自身は、KULeuvenがベルギーでUniv. Gentと並んでレベルが高いこと、国際的に有名であることから選んだそうです。自由に選べるとなると、皆が高レベルで有名な大学を選んで収拾がつかなくなりそうな気がしますが、おそらく入学後に進級できるかどうかを自分で判断し、各自が自分に合った大学を選ぶのでバランスが取れているのだと思います。自分の能力と適性を、試験の点数という客観的なデータによらずに自分自身で判断するというのは、非常に良いことだなあと感じました。機会があれば、どれくらいの学生がドロップアウトするのか、ドロップアウトした学生の進路はどうなるのか、といったことも調べてみたいです。おそらく、ドロップアウトすることは恥でも何でもなく、再チャレンジの機会が豊富に用意されていると思うので。
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