日本では首相がすぐ替わるような印象がありますが、ベルギーでは政権がすぐに崩壊するようです。4月22日(木)、Leterme首相が国王に辞表を提出し、26日(月)に国王が辞職を承認したため、現政権が崩壊しました。ネットの記事によると、Leterme首相が辞表を出すのは今回で5回目で、実際に辞めるのは2回目とのこと。何回も首相になるのはすごいですが、何回も辞めるというのもすごいな、と変なところで感銘を受けてしまいました。
さて、今回、そしてここ最近の政権崩壊劇の原因になっているのが、ブリュッセルとその周辺地域に設定されている「BHV選挙区」です。同僚から聞きかじったり、ネットで読みかじったりしたことをまとめると、
・Flemish-Brabant州の選挙区は東のLeuven、西のBrussels-Halle-Vilvoorde (BHV)の2つ。
・BHV選挙区はオランダ語・フランス語併用地域であるBrusselsと、オランダ語圏であるHalle-Vilvoordeから成っている。
・通常の選挙区では、言語境界線を越えて投票することはできない。例えば、Leuven選挙区では、オランダ語圏(ベルギー北部のFlanders)の政党に投票することはできるが、フランス語圏(ベルギー南部のWallonia)の政党には投票できない。
・一方、BHV選挙区は言語併用地域を含み、またフランス語を母語とする住人が多い地域を含むので、フランス語圏の政党にも投票できるという特例が認められている。
・オランダ語圏の住人からすると、上記の特例は不平等である(フランス語圏の選挙区で、オランダ語圏の政党に投票できるところはない)。一方、フランス語圏の住人からすると、特例はフランス語を話す人々の権利を守るために必要な措置である。
・オランダ語圏、フランス語圏の意見が鋭く対立しているため、BHV選挙区の境界線を仕切り直す(例えば、Brussels選挙区とLeuven-Halle-Vilvoorde選挙区に分ける)などの提案が成されているが、妥協には至っていない。
といった感じになります。「ベルギー言語紛争の縮図とも言えるのが、このBHVをめぐる対立だ」と指摘もあるくらい深刻な問題で、解決にはほど遠いようです。ベルギーに対して尊敬、憧れとも言える思いを抱いていた私にとっては、先日の大きな列車事故に引き続き、今回の一件は少なからずショックでした。
長くなったので、ベルギーの尊敬できるところ、またベルギーが抱えるもう一つの問題については、またの機会に書きたいと思います。
最後に、今日のランチで聞いた同僚のやり取りを紹介しましょう。
同僚A(ドイツ人):言語対立なんてさ、ドイツ語圏の人達に解決してもらえばいいんじゃないの。彼らは少数派だから、オランダ語圏、フランス語圏のどちらにも偏らず、中立、公平な立場で事態を収拾できると思うよ(※ベルギーにはドイツ語を母語としている人が約6万人いて、ドイツ語も一応公用語です)。
同僚B(ベルギー人):ああ、そういえば前にもドイツ人がそういう感じで問題を解決しようとしたことがあったね(※暗に、第一次、第二次大戦中のドイツ軍によるベルギー侵略のことを言っています)。
同僚A:そうそう、あれはさ、少なくともベルギーに関してはうまくいったと思うだけどねー。
・・・文字にするとかなりきついやり取りですが、彼らは終始笑顔で楽しそうでした。でも、私にはどこでどう笑えば良いのやら分かりませんでした。文化の違いを感じる一瞬です。
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6 年前